Wine @ 2021

※シリーズの説明は「銘柄について」を参照のこと。

2021年はひどい暑さに見舞われました。とくに7月の温度が高く、雨も全く降らなかったため、収穫は例年よりも10日も早い時期になりました。

そのため熟度は高めというものの、酸と糖度のバランスが例年とは違うものとなりました。醸造方面でも温度が高かったおかげで苦労をした年です。

2021ビンテージはいわゆるドメーヌモノ=自園畑のワインの実質的なファーストリリースの年です。蛙鳴千草シリーズは樽ごとに分けていろいろなブレンドを試してみました。


KOYACHI 2021 Passetoutgrain

ランセッカの自園畑の赤。記念すべきドメーヌモノの(実質的な)ファーストリリース。

ブドウ栽培: Lan Seqqua 西畑
ブドウ品種: Pinot Noir 2/3 + Zweigelt 1/3
アルコール: 12.5%
醸造本数: 約1,800本
リリース: 2023年3月

やっとうちの畑のワインを出すことができました。この場を借りて、皆様にお礼申し上げます。ありがとうございます。(2023年2月記)

原料はランセッカの畑の西日がしっかりと当たる西畑から。収穫は10月の初旬から2週間程度かけて行ないました。

ツヴァイゲルトは全房でピジャージュは少なめ、ピノ・ノワールの半分は除梗、半分は全房で樹脂タンクにて発酵。機械式水平プレスでまとめてプレス。発酵が落ち着いた段階で樽へ。新樽率は2割相当程度。1年熟成ののち、ブレンドして瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時のみ添加しています。

ツヴァイの主張が強め。熟成感のある色味があります。ブルーベリーやカシスの果実感とともに生革、チョコレート、黒豆のような濃い色のニュアンスが感じられます。酸は穏やかで、タンニンは控えめ。樽香がそこそこあります。

抜栓後はお早めにお飲みください。熟成も良いかもしれませんが、果実感はあるのですぐ飲んでも美味しく飲めると思います。チーズケーキやトマト煮込みなどおすすめします。

個人的には果実感がしっかり出てくれたので及第点。赤ワインとしてはもう少し抽出で攻めてもよかったかなという反省もありますが、何はともあれ、ランセッカの初ドメーヌモノとして楽しんでいただければ幸いです。

2023.9追記: 抜栓後に温度が高い状態でおいておくと、いわゆる豆臭が出る場合があります。気になる場合は少し冷やし目で飲んでみてください。また、抜栓後は早めに飲むことをオススメします。

KOYACHI 2021 Blanc de Noir

ピノ・ノワールの貴腐を集めて白仕込みしたふくよかなワイン。

ブドウ品種: ピノ・ノワール
アルコール: 14.5%
醸造本数: 約330本
リリース: 2023年3月
備考: キンキンに冷やさず、少し高めの温度がオススメ。

赤ワインには入れられない、貴腐(ボトリチスというカビの一種)の付いたピノを集めて造ったワイン。樽の容量の都合で健全なブドウも混ぜたのですが、暑かった年ということもあってアルコールは高めになりました。

10月初旬から2週間程度に渡って収穫。樹脂製タンクで潰さずに保管し、収穫終了後に油圧バスケットプレスで搾汁。樹脂製タンクで発酵させ、1空きの木樽へ。1年後の2022年11月に樽出ししてすぐに瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時のみ使用。

“Blanc”といいつつ、色は深い琥珀色or飴色。紅茶やニッキ、黒土といった色の濃い香りとともに煙やナツメなどのニュアンスも感じられます。アルコール度数は高く、はちみつ感のある甘さがあり、全体的にボリュームのあるワインです。酸は丸みがあり、後半には少しの苦味があります。料理にもあわせやすいかなと思います。においの強いチーズ、ハーブを効かせた料理などが良さそうです。

飲む時は少し高めの温度の方が特徴がよく出ます。保管は低温で。抜栓後は変化が早いですので、お早めにお飲みください。

2021 pon nitay(ポンニタイ)

ランセッカ自社畑南斜面の白ワインです。北海道の森の凛とした空氣をイメージして仕込みました。

名前にはアイヌ語をお借りしました。大体の和訳はpon – 小さな、nitay – 森 です。

ブドウ品種: ピノグリ6割+ゲヴュルツトラミネール4割
アルコール: 12.0 %
醸造本数: 約830本(一部を除き道内限定販売)
ラベル原画: 木平千尋さん(余市町在住)
供出温度: 12度前後、冷やしすぎないほうが香りが立ちます

ブドウ/栽培

21年は初夏の雨が極端に少なく、垣根の下のクローバーさえ苦しそうな年でした。当エリアでは強い台木を使っているためブドウは寡雨による悪影響はなく、葉の病氣が少なく済みました。8月にマメコガネは大量発生したものの補殺のみで対処しました。収穫は9月末に実施しました。

醸造

ゲヴュルツトラミネールの一部を手除梗して4日のスキンコンタクトを実施しました。残りは潰さないようにタンクで3〜4日マセラシオンカルボニックを行い、その後垂直式バスケットプレスにてじっくりゆっくり搾汁しました。ステンレスタンクで発酵させ、落ち着いてからステンレスタンクとステンレス樽にて1年熟成しました。瓶詰め前のブレンド時に亜硫酸を添加しました。

コメント

苗の植栽から日常の栽培管理、瓶詰めまで、たくさんの方のご助力によって初リリースにたどり着くことができました。ここに記して、感謝いたします。ありがとうございます!

ワインはしっかりした酸があり、白っぽい花の香り、若いナシやモモの香りがあります。終盤、僅かに苦味があります。まだ閉じている印象があるので、夏くらいからの抜栓をお勧めします。

カレイやニシンなどの焼き魚、根菜の煮物、ポトフや鶏のスープなどにお供させてください。

文責: pon nitay 栽培・醸造担当 りゅうこはる 拝 (2023.3月記)

2021 Soumagnon Blanc

余市町登地区のソウマファームよりのソーヴィニョンブランのワイン。

ブドウ栽培: ソウマファーム(余市町登町)
ブドウ品種: ソーヴィニョンブラン
アルコール: 13%
醸造本数: 280本
リリース: 2023年3月頃
備考: キンキンに冷やさず、少し高めの温度がオススメ。相馬さんがやっている余市のレストラン、ヨイッチーニなどで提供しています。

同じ余市町登地区、ソウマファーム(代表: 相馬慎吾さん)のソーヴィニョンブランを使用。畑がある斜面全体としては西を向いており、緩やかな傾斜。収穫は暑い年としては遅めの10月終盤。青さは抜け、貴腐もそこそこ付き、余市ではよく熟したブドウになったと言えるでしょう。

醸造では2週間程度の醸し期間を経てプレス。ピジャージュは後半に少し。樹脂製タンクで引き続き発酵させ、新し目の樽で澱多めで1年間熟成。2022年末に樽出ししてすぐに瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時に添加。

色はオレンジがかった黄色。少しの濁りがあります。黄桃やカリン、南国系のマンゴーのような華やかな香りとともに、藁のような香ばしいニュアンス。口中ではオレンジの香りと共に皮の苦味、喉の奥がピリッとするような酸があります。

全体的には2020よりクリーンで切れのある感じに仕上がりました。それでいてやっぱり複雑で厚みのある味わいになり、余市で熟したソーヴィニョンブランの面白さを感じさせるワインになったかと思います。

2021 蛙鳴千草 Garoma Karomas
(アメイセンソウ ガロマ・カロマス)

Sémillon をベースに、’G’ewürztraminer と ‘K’erner というアロマの強い2つの品種を加えた白ワイン。

ブドウ栽培: ソウマファーム(余市町登町)
ブドウ品種: ほぼ半分がセミヨンと、残りがゲベルツトラミネル:ケルナー=1:1
アルコール: 12.5%
醸造本数: 約300本
リリース: 2023年3月頃
備考: キンキンに冷やさず、少し高めの温度がオススメ。

2021garoma_karomas_face

ご近所のソウマファームでとれた3つの品種で仕込んだ白ワイン。収穫は遅めで貴腐は選果せずそのまま。

18時間のスキンコンタクトからバスケットプレスでじっくり搾汁。発酵が終わる前に古樽に移動して1年間熟成。後述の (名前末尾sの無い)Garoma Karoma と違って樽熟成期間中は変化が少なく経過しましたが、瓶詰め後に性格が出てきました。2022年の11月に瓶詰め。亜硫酸は瓶詰前のみ添加。

独特の塩っぽさやユーカリ香とともにオレンジやパイナップルの酸味のある果実とはちみつが感じられます。塩を攻めたオイル系パスタなど良さそうです。

2021garoma_karomas

香りの強い2品種を混ぜたらどうなるか?という実験的なロットにセミヨンで樽の容量に調整した、いわばワイナリーの都合のあるワインです。樽の中では特徴が出ず心配していましたが、最終的にはうまくまとまってくれて、複雑性のある味わいになったかなと思います。

2021 蛙鳴千草 Garoma Karoma
(アメイセンソウ ガロマ・カロマ)

‘G’ewürztraminer と ‘K’erner というアロマの強い2つの品種の白ワイン。

ブドウ栽培: ソウマファーム(余市町登町)
ブドウ品種: ゲベルツトラミネル + ケルナー(ほぼ 1:1)+ 補酒でセミヨンがほんの少し
アルコール: 12.5%
醸造本数: 約270本
販売先: 2022年度ふるさと納税に出品/ヨイッチーニに提供
備考: キンキンに冷やさず、高めの温度がオススメ。

2021garoma_karoma_face

ご近所のソウマファームでとれた2つのアロマ系品種で仕込んだ白ワイン。収穫は遅めで貴腐は選果せずそのまま。

18時間のスキンコンタクトからバスケットプレスでじっくり搾汁。発酵が終わる前に古樽に移動して1年間熟成。樽での熟成期間中にしっかり香りが立ってきました。2022年の11月に瓶詰め。亜硫酸は瓶詰前のみ添加。

カリンや黄桃、口に含むとペトロールとパイナップルの香りが感じられます。酸味のあるソースや蒸し鶏やレモンかけホタテなどのライトな料理にいかがでしょうか。

2021GaromaKaroma

香りの強い2品種を混ぜたらどうなるか?という実験的なロットです。2022年の夏頃からしっかり香りが乗って来て、かなり良い状態でしたが、気温が下がるにしたがって少し落ち着いてしまったところもあります。少し瓶で置いておくことをおすすめします(2022年12月末記)。

かなりしっかり香りが立ってきました。ゲベルツのスパイシーな南国系の香りと、貴腐感の混じったケルナーの香りもでていて、かなり強めです。料理に合わせる、というよりは食前もしくは食後に香りの強いチーズといったおつまみと一緒に楽しむのが良さそうです(2023年2月記)。

2021 蛙鳴千草 Sb+Se
(アメイセンソウ エスビープラスエスイー)

余市のソーヴィニョンブランとセミヨンを使って、いわゆるボルドーブレンドの白をやってみたワイン。

ブドウ栽培: ソウマファーム(余市町登町)
ブドウ品種: ソーヴィニョンブラン8割+セミヨン2割
アルコール: 13%
醸造本数: 約280本
備考: キンキンに冷やさず、少し高めの温度がオススメ。

ソウマファームからは5種類のブドウを買わせてもらっていますが、一番レアなブドウがセミヨン。ソーヴィニョンブランもあるし、量も中途半端だからセミヨンと合わせてやってみましょうよ、と相馬さんと話してブレンドしてみました。

セミヨンが10月中頃、ソーヴィニョンブランは10月終盤での収穫。どちらも暑い年ということもあり、しっかり熟した感じです。貴腐もまあまあ入っており、そのまま仕込。Sb は2週間醸し、セミヨンは18時間のかるいスキンコンタクトしてバスケットプレスで搾汁。樹脂タンクで発酵させ、ブレンドした状態で1年間古樽で熟成。2022年11月に瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時のみ添加。

黄色がかった熟成感のある色。青さはほとんどなく、梨のコンポート、アンズ、落ち葉、カリン、柑橘の皮、木の実、はちみつといった香りがあります。口中では酸はおとなしめで輪郭は丸め、煙っぽさや少しの苦味があります。塩を効かせた料理やオレンジ煮などと相性が良さそうです。

少し高めの温度の方が特徴がでやすいワインです。

2021 早花咲月ロゼ

ナイアガラベースの微発泡ロゼ。赤い果実感が特徴の軽めの飲み物です。

葡萄品種: ナイアガラにキャンベル・アーリーが20%ほど
アルコール: 9.5% – 微発泡
容量: 750ml
醸造本数: 約4,300本
リリース: 2022年4月第2週ごろ
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

21ssr_face

昨年度にふるさと納税に出した 2020 Noborico Nobori Rose が好評だったため、レギュラーアイテムとして醸造しました。諸般の都合により、今後は早花咲月(サハナサヅキ)の方の名前で行くと思います。

ブドウは余市町内で収穫されたものを使用。偶然にも3生産者ともに「お」から始まる名前だったりします。

ナイアガラ・キャンベルともに1週間程度のかもし期間を経てプレス。亜硫酸無添加にて瓶詰め。泡は弱めですので、抜栓後は早めにお飲みください。

2020よりもう少し赤い果実感がほしいなということでキャンベル割合が高め。そのため赤いザクロやアセロラといったフレッシュな果実感がしっかりあります。少しの渋みが味の後半をまとめており、サンドイッチなど軽い食事にも良さそうです。

2021sahanasazuki

2021 早花咲月(白)

ナイアガラの微発泡。醸し感のあるスパークリングです。

葡萄品種: ナイアガラ
アルコール: 9.5% – 微発泡
容量: 750ml
醸造本数: 約2,400本
リリース: 2022年4月第2週ごろふるさと納税へ。2022年8月頭に酒販店様へ。
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

ブドウは余市町登の小登 (CoNobori) 地区の Sunny Side Farm、大倉さんの畑より。栽培はボルドー1回と硫黄が1回のみ。地球にやさしい方法で畑に向き合っています。

醸造シーズンの高い気温のせいか醸しの味わいが強めです。渋みがあり、そのおかげか和ミカンっぽさが感じられます。亜硫酸は瓶詰時のみ使用。少しオリがあり、泡の抜けは早いため、抜栓後は早めにお飲みください。

ライトな飲み物です。熟成して良くなるタイプのお酒ではありませんので、お気軽にお楽しみください。


2021 Cam-blanc

ドメーヌユイからアイデアを頂いて作った赤品種から作った白ワイン(Blanc de Noir とか言ったりします)。読みは「キャン」ではなく「カン」ブラン。

葡萄品種: キャンベルアーリー
アルコール: 9.5% – スパークリング
容量: 750ml
醸造本数: 約220本
リリース: 2022年4月第2週ごろふるさと納税へ。
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

ドメーヌユイの2020のキャンベル白が美味しかったので真似して作ってみた、という単純な動機から始まったワインです。

ブドウは余市町登の小登 (CoNobori) 地区の Sunny Side Farm、大倉さんの畑より。栽培はボルドー1回と硫黄が1回のみ。地球にやさしい方法で畑に向き合っています。

キャンベルを醸さず垂直バスケットでじっくりプレス。プレス直後はピンク色の液体でしたが、発酵とともに赤味が抜けていき、最終的には黄色がかった液体になりました。

キャンベル赤仕込のベタッとしたベリー感はなく、黄色い果実感と泡で素直に親しめる味になってくれたかなと思います。

(2022年6月テイスティング:キャンベル感が表れてきました。色は黄色っぽいものの、味としてはキャンベルの赤の風味の主張が強めです。)