※シリーズの説明は「銘柄について」を参照のこと。
2022年はこの数年では比較的遅めの春から始まり、前年に続いて暑い年になりました。といってもほどほどの雨は降り、平均的な気温が全般に高かったという印象です。
収穫期も悪い天気ではなかったものの、あるところで糖度の伸び、というか成熟がビタッと止まってしまいました。酸が高めだったのでブドウが痛むような事はありませんでしたが、ちょっと不思議な熟し方をした年でした。
酸も残り、糖度もほどほどのところまで上がり、最終的には北国らしく熟したブドウになったのかなと思います。
蛙鳴千草 2022 Ch
冷涼なニュアンスのあるシャルドネ。呑み飽きない美味しさ。
ブドウ栽培: 余市町内の単一畑より
ブドウ品種: シャルドネ
アルコール: 12%
醸造本数: 約1,300本
リリース: 2023年10月
備考: 主に2023末募集のふるさと納税へ出品

ぶどうは余市町内より。ぜひ余市町のためにということでお預かりし、ふるさと納税に提供させていただきました。
収穫は暑い年として見ても早め。個人的な想定よりも糖度が上がりきらなかったかなという印象もありましたが、結果的にはバランスのとれた酸につながり、良かったようです。
2日間の醸し期間ののちに機械式水平プレスにて搾汁。発酵終盤から大きめの新樽・小さめの古樽、ステンレスタンクにわけて熟成。オリを多めに含ませた状態で10ヶ月ののちにブレンド、瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時に少量を添加。
僕=惇太郎の買ブドウのワインは2回転捻りのようなのが多いですが、比較的ぶどう品種のセオリーどおりに素直に仕込んだワインといえるかもしれません。
最初に滑り込んでくる酸と共に硬めの口当たりがありますが、口中では丸みと粘性があり、よく膨らみます。グレープフルーツと白桃の果実感にユーカリ的な青さのある清涼感、火打ち石のざらりとした硬さなどがあります。温度が上がってくるとパイナップルも顔を出してきました。
構成要素はシンプルですが、酸のある余韻はじっくりと長く、冷涼感を飲み飽きずに楽しめるワインになりました。供出温度は酸を効かせたい方は低めで、ただし心持ち高めの温度の方が果実感の甘さのある特徴がよく伸びます。塩味を攻めたシンプルな鶏肉系パスタをおすすめ。

酸があるので多少の熟成も行けそうですが、瓶詰め直後でも果実感はきちんと出ていて、口当たりの硬さとも好バランス(2023/9テイスティング)。飲みたくなったら飲み頃です。
これまでにシャルドネの醸造に直接ふれる機会がなく、正直なところ明確な醸造のイメージを持っていなかったのですが、よい機会ということでいろいろとチャレンジができました。結果的にもウチの他のキュベには無い、しっかりとした冷涼感さをお楽しみいただけるかワインになったかと思います。
蛙鳴千草 2022 Ch.B
蛙鳴千草Ch の新樽熟成したロット。
ブドウ栽培: 余市町内の単一畑より
ブドウ品種: シャルドネ
アルコール: 12%
醸造本数: 約180本
リリース: 2023年10月
備考: 町内飲食店および2023末募集のふるさと納税へ出品

醸造方法のほとんどは .B 無しの蛙鳴千草 Ch と同じです。大きめの新樽に入っていたワインだけを詰めたキュベになります。
コンセプトとしては「シャルドネ=樽香を効かせたというセオリーを余市のシャルドネに当てはめてみる」。試験的なロットとも言えるかもしれません。
トップには樽から来たであろう煙と少しの甘い香りがあります。樽香は支配的ではなく、そこそこな程度。それに反して口中では酸があり、ヨーグルトとパイナップルの香りが強く感じられます。アルコール感は強くありませんが、中盤の膨らみに樽香があわさって、細いながらも香ばしい余韻が続きます。
果実感がぼやけるので早めに飲んでしまうことをオススメします。
樽香と酸。まだ少しお互いが遠いところで個別に主張しているような雰囲気もありますが(@2023/9)、ギャップとメリハリのある味わいは個人的には面白く感じています。熟成したらより調和の取れた味わいが出てくるかもしれません。
2022 早花咲月ロゼ
スパークリングロゼ。赤い果実感が特徴の軽めの飲み物です。
ブドウ栽培: 余市町3箇所より
ブドウ品種: ナイアガラ+キャンベル・アーリー15%ほど
アルコール: 8.5%/発泡性
醸造本数: 約4,900本
リリース: 2023年3月
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

ブドウは余市町内の大倉さん、木内さん、大島さんより。ナイアガラは9月末と10月中過ぎの2期に分けての収穫。前の2ビンテージよりもシャープな酸が残りました。
スキンコンタクトは控えめにして、フレッシュ感を出すようにタンクを低温気味に保ちながら樹脂製タンクで発酵。澱引き、ブレンドを経て11月に瓶詰め。瓶内2次発酵で泡を付け、年明けの2月にデゴルジュマン(オリ抜き)。
4,900本のオリ抜きはなかなか大変でしたが、その作業のおかげでしっかりクリアになってくれました。アセロラの赤い果実感が主体となり、キュッとする酸の口当たりとともに細かい泡が上がってきます。
※瓶底に少し酒石が出てしまったロットがあります。冷やした上での抜栓をお願いします。
2022ビンテージからは白は無しにしてロゼのみを作ることにしました。
2022 Cam-Blanc
赤ブドウのキャンベル・アーリーから作った白仕込みのスパークリング。少し色が出てロゼっぽくなりました。
ブドウ栽培: Sunny Side Farm(余市町登町小登地区)
ブドウ品種: キャンベル・アーリー
アルコール: 10%/発泡性
醸造本数: 約500本
リリース: 2022年度ふるさと納税+不定期に販売?(未定)
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

黒ブドウのキャンベルを白仕込みにしたスパークリングワインです。このアイデアはドメーヌユイさんからいただきました。
原料は余市町登町小登地区、Sunny Side Farm 大倉奈々さんの処から仕入れました。平飼い養鶏の農家さんから分けてもらった鶏糞をシーズン中2回散布、萌芽前に石灰硫黄合剤を一回散布しています。
マセラシオンカルボニックで1週間から10日、低温状態で潰さないように樹脂タンクで静置。二日に分けて垂直式バスケットプレスでゆっくり搾りました。果皮が厚く粒が大きいので、プレスにはかなり苦戦しました。
樹脂タンクで発酵させ、オリ引き、ブレンドの後、11月上旬に瓶詰め。瓶内二次発酵で泡をつけ、ふるさと納税の出荷分のみ2月にデゴルジュマン(オリ抜き)を実施しました。残り半分は退色と旨味の抽出を狙って試験的にデゴルジュマンなしにしています。
醸し期間を経たため、ロゼに近い色合いです。赤ふさすぐりやザクロのような果実感、しっかりめの酸、穏やかな泡があります(2023/9月追記: 夏を超えて泡が強くなってきました。抜栓時は吹き出しにご注意ください)。少し暑くなってからの食前酒、風呂上がりの一杯、オイル系のさっぱり目のパスタ、赤系のベリーが載せられたクリームケーキと一緒にどうぞ。
蛙鳴千草 2022 Nagorino
ランセッカで仕込んでいるヴィニフェラ(=ワイン専用ブドウ)のハードプレスやオリ上を集めてつくったワイン。濁りがあります。
ブドウ栽培: 余市町登地区
ブドウ品種: シャルドネ、ツヴァイゲルトが多め。加えて色々。
アルコール: 12%
醸造本数: 約150本
備考: 販売は未定。イベントで販売などするかも?

名残の=Nagorino とは古い言葉で「余りの」といった意味の言葉。文字通りワインのあまりを集めてつくったワインです。
品種構成としてはシャルドネが多くて40%ほど。ついでツヴァイゲルト約20%。あとはメルロー、ピノグリ、ピノノワールなどが少しずつ。樹脂製タンクにて発酵させ、年明けに瓶詰め。
色は濃い目の赤。全体ににごりがあります。ごく弱めの泡がある場合があります(抜栓時は冷やしてください。)オリ上に使っていた期間も長かったため、コテッとした味わいがあります。白品種の方が多いですが、どちらかというと赤ワイン的な味わいの要素が多いワインです。独特な旨味もあり、泡がなくなった後でもスティルワインとして楽しめるお酒です。