Wine @ 2023

冬の雪がそこそこにあった割には雪解け期の温度が高く、早い春から始まりました。そのまま温度が高い状態が続いたものの、5月に低温で小休止。

しかしその後は本当に例年+4度ぐらいの気温がずっと。雨がふる頻度は低かったのですが、固めて多く降ることが多かったようです。

そして蒸し暑さ!温度が多少高くても乾燥していれば問題ないことも多いですが、とかく蒸し暑い!そのせいでべと病の発生は多め。お薬での対策も時期を逃したりしたのもあり、なかなか病気が止まらない状態が続きました。ブドウの樹も伸びたい放題で、途中で摘心を諦めたエリアも。

9月に入ったもののやはり温度は”高め”。そしてベレゾン後半の雨で玉割れも発生。比較的酸の残る品種でも痛みがひどく、酢酸が出てる房も目立ちました。

収穫は人手と時間をかけて行なうことになりました。幸いにもウチでは北海道全体で問題になった鳥による食害はほぼなし(2〜3%ぐらい?)。最終的な収穫量は赤4.2t、白1.4tとまずまずの量になりました。実を多めにつけていたこともあり、熟度としてはもう少し待ちたかったですが、病気と鳥のことを考えると悪くないタイミングだったのかもしれません。

買ブドウはラブルスカ(早花咲月)が多め、ヴィニフェラ種は鳥害により大幅減となりました。

※シリーズの説明は「銘柄について」を参照のこと。

2023 KOYACHI パストゥグラン

全房仕込みでハーバルなニュアンス強めのワインとなりました。

ブドウ栽培: ランセッカ自園の西畑より
ブドウ品種: ピノ・ノワール:ツヴァイゲルト=約3:1
アルコール: 12%
醸造本数: 約3,700本
備考: 産膜が出ることがあります(後述)。お早めにお召し上がりください。

少し早めの春から始まり、5月には気温の低い期間もあったものの、それ以降はとにかく蒸し暑い!当然ベト病もかなり発生。ヴェレゾン以降もムシムシした暑さが続いた上に後半には雨で玉割れも。

痛みも多かったため、収穫には時間がかかりましたが幸いなことに鳥害はほぼなし(2〜3%減?)。天気の割には4.2tの収量となりました。ブドウが夏バテしたような感じで酸、糖度ともに低め。

収穫に時間と手間がかかったこともあり、この年は全房発酵100%にしてみました。果実感の具合を考えると除梗ロットも作ったほうが良かったかもしれませんが。

ツヴァイは例年通り全房ですが、ピノもすべて全房発酵。これらが発酵終盤になったタイミングでまとめてプレス。ピジャージュなどの頻度は少なく抽出は軽めに。樹脂タンクで発酵ののち、樽へ。新樽率は2割相当程度。1年熟成ののち、ブレンドして瓶詰め。亜硫酸は瓶詰め時のみ。樽では全房発酵感が強かったのですが、瓶詰めしたらまとまってくれたという印象です。

非常に厳しい年であったということで酸が低く、ワインの輪郭はゆるめ。全房発酵からの緑茶的な青さの主張があり、そこにアセロラやカシス、梅などが乗っている印象です。渋さのあるタンニンは控えめ、酸は穏やかで全体には冷涼さの感じられるライトな赤ワインです。果実感がおとなしいため、抜栓してから開くのに時間がかかるかもしれません。飲用時の液温は果実感がでるよう、高めを推奨です。

それから、ボトルによって液面に産膜がでることがあります。

産膜酵母とよばれる微生物によるもので、液面に浮く白っぽい膜状のものをつくります。シェリー酒やフランスジュラ地方のヴァン・ジョーヌの熟成に使われるものでもあり、そのまま飲んでいただいても問題ありません。しかし長期間存在する状態だと味や香りが変わってしまうこともあるようです。その場合には、すみませんがお早めにお召し上がりくださいますようお願い申し上げます。(2025.3月時点では味・香りへの影響はなさそうです。)原因は簡単に言うと醸造での管理の甘さです。。

味筋からみると全房感強めということで本来ならば熟成させてみて、と言いたいところですが、産膜もありそうということで、お早めに。

2023 pon nitay

ブドウ栽培: ランセッカ自園の南畑
品種: ピノグリ48% ゲヴュルツトラミネール26% ピノノワール17%その他(ピノブラン、リースリング、シルヴァーナ)9%
Alc: 11.5 %
容量: 750ml
醸造本数: 約1,300本(酒販店を限定しての販売です)
ラベル原画: 木平千尋さん(余市町在住)
供出温度: 10-12度くらいから飲み始め、少しずつ温度変化につれ香りの変化が楽しめます。
名前の由来: 
北海道の森の凛とした空氣をイメージして仕込んだ白ワインです。名前にはアイヌ語をお借りしました。大体の和訳はpon – 小さな、nitay – 森 です。

ブドウ/栽培
原料は自社畑のうち、通称「南畑」より。農薬は石灰硫黄合剤とボルドー液数種、赤ワインの畑に準じます。肥料はなし。
23年はピノグリ好調、ゲヴュルツは開花期の天候が悪かったのと、前年が豊作だった影響なのか、花が振るいました。夏が蒸し暑く(平年比+2.4度!!)、9月中旬まで氣温が下がらずに推移しましたが、糖度の上がりはイマイチ!収穫のタイミングを迷いつつ、酸が下がりすぎないように、それから鳥害が見られ始めていたので、予定より早めに収穫をしました。

醸造
ゲヴュルツトラミネールは除梗して10日間スキンコンタクトを行いました。(赤の収穫が入ってしまい、想定よりかなり長め…)残りのブドウは全房でそーっとタンクに入れて5日間醸し、垂直式バスケットプレスにて搾汁しました。ステンレスタンクで発酵させ、落ち着いてから500Lの木樽x1と228Lの樽x2にて1年熟成しました。
樽入れのタイミングがずれたので、ゲヴュルツとピノ系という樽の分かれ方になりました。
pHが異例の高さだったため、保険も兼ねてブレンド前に亜硫酸をメタカリベースで40ppm添加しました。

コメント
はっきりしたアタックの酸があります。開けたては揮発酸がかなり氣になりますが、30分ほどすると落ち着きます。ユリ、カリン、甘夏の皮、ハチミツ、熟したナシ、白桃、紅茶、カモミール、わずかにスパイシーなコショウのような香りがあります。口に含むとわずかに塩味を感じ、余韻はすーっと長く、タネ由来のタンニンの苦味が後を引き締めます。

お取扱い上の注意:pHが高いため酸化に弱そうです。抜栓1週間置くと上から褐変してきます。数日でお召し上がりください。

文責:pon nitay 栽培・醸造担当 りゅうこはる 拝

2023十返りの花(トカエリのはな)

貴腐ケルナーを使ったアルコール16度の白。初リリース。

※数量寡少のため、酒屋さんを限定しての販売となっています。

ブドウ栽培: 余市町内より
ブドウ品種: ケルナー + シャルドネ2割弱
アルコール: 16%
醸造本数: 約600本
備考: 冷蔵保管の上、お早めにお召し上がりください。

いろいろ御縁があってケルナーをいただき、初仕込みすることになりました。2023は暑かった年だったのでケルナー以外のピノやシャルドネでは貴腐は少なかったのですが、ケルナーは遅取りでお願いしていたこともあり、がっつり貴腐りました。正直チョットなあという状態だったのですが、酢酸が出てはいなかったし、貴腐の具合も結果的には良かったのかなと思います。(ちなみにシャルドネは健全でした。)

醸したりはせず、すぐにプレス。ジュースの糖度は28度!だったら甘口作ろうというのが普通の発想だと思いますが、それじゃあ面白くないのでむしろ限界までアルコール上げてみたらどうだろうか、という方向へ。ケルナーのアロマ系の香りとも相性良さそうだし。さすがに野生酵母では途中で発酵が止まってしまうので、勉強も兼ねて少し強めの乾燥酵母を添加しました。

発酵完了後に新し目の樽に入れて1年間の熟成。亜硫酸は瓶詰め前にいつもより少し多めに加えています。2024年末に瓶詰め。

パイナップル、みかん、黄桃、それに蜂蜜をあわせたような独特な黄色い香り。アルコール感は数字ほどは強く感じないものの、口中では残糖感もあって非常に大きくふくよかさを感じます。少し揮発酸がいますが2023のゆるい輪郭にアクセントを加えるかたち。終盤にはじくじくとした少しの苦みとともに余韻が長く続きます。

抜栓直後が一番華やかさがあり、そこから日数を置いても香りは落ちてしまいます。また酸化的な要素も強いため、熟成させるタイプのワインではなさそうです(正直同じようなワインの経験が無いのでわかりませんが。。)

貴腐が多く入っており残糖も多少あるということで、できれば冷蔵保管のうえお早めにお飲みください。

2023蛙鳴千草

原料が少なかったため、2024はいつもの3品種に加え、Soumagnon Blancのソーヴィニョンブランも入ったワインとなりました。

ブドウ栽培: 余市町登地区ソーマファームより
ブドウ品種: ソーヴィニョンブラン、ケルナー、セミヨン、ゲベルツトラミネル
アルコール: 11.5%
醸造本数: 約300本
備考: 酒屋リリースはなし。相馬さんの取り扱いと、主にイベント用で。

2023年は余市町全域で鳥害が多く発生しましたが、山際に畑があるソーマファームも例外に漏れず大きな被害が出てしまいました。とくにソーヴィニョンブランの被害が多く、単体では作れない量でもあったし、他3品種も量がすくなかっため、合体して蛙鳴千草とすることにしました。ゲベルツは特に少なめ。日当たりが少し悪い川際ということで実を付けるのに苦戦しているようです。

暑い年であったため、酸は少なめ。暑すぎてかえって過熟にはならず、果実感は北国らしさをたもってくれたかなという印象。

2020の Soumagnon Blanc が良い熟成となっていたため、ソーヴィニョンブランは全房での長期間の醸しにさらしてからプレス。他3品種はそれほどひねらず、まとめてプレス。樽で1年間熟成の後、瓶詰め。

醸しは強めワインですが、色はレモンイエロー(うちでは珍しい?)。口中では青っぽい全房感と苦みのあるソーヴィニョンブラン成分が強めですが、ケルナーからであろう分厚い黄色い花の香りが主張してきます。果実感の分厚さにはかけますが、レモンやいくつかの気温の低いような特徴がしっかり立っています。暑い時期にすこし冷やし目でキリッと飲みたいワインです。

生産量が少ないため、酒屋さんへの販売はありませんが、相馬さんの会員制度やイベントなどで飲める機会があるかなと思います。

(2025.3月追記)抜栓して2週間ほど放っておいたボトルがありましたが、悪い特徴も出ず、それでいて蛙鳴千草らしい特徴が残った状態でした。もちろん華やかさは落ちていましたが、シナモンのような香ばしい香りもあったりしてこれはこれで良し。抜栓後はゆっくり日数をかけても良いかもしれません(でも自己責任でお願いしますね笑)。

2023 早花咲月ORANGE(オレンジ)

独特のトロリとした口当たりがあります(@2024/7月)。ロゼの予定でしたが、キャンベルの赤が出ず、サブタイトルが「オレンジ」となりました。抜栓時に少し吹きやすいです。

ブドウ栽培: 余市町2箇所より
ブドウ品種: ナイアガラ90%+キャンベル・アーリーが10%+2021メルローが少し
アルコール: 7.5%/発泡性
醸造本数: 約7,200本
リリース: 2024年7月
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

ナイアガラはなかなか糖度が上がらず、農家さんに時期を引っ張ってもらったため、1ヶ月ほどの収穫期間が続きました。例年よりも糖度は低め。キャンベルは猛暑の影響で晩腐病が大発生。収穫量は大幅減となりました。色ものらなかったようです。

ぶどうにはタンクでプレスを待ってもらう期間が続き、醸し期間はこれまでよりも長め。樹脂製タンクでの発酵終了後にもタンクで待つ期間が多かったため、後述のような独特な感じになったのかなと思います。

補糖して瓶詰め。亜硫酸は無し。本来はデゴルジュマン(オリ抜き)する予定でしたが、いざ2月になって開けてみると液体にトロリとした粘性が! おそらく乳酸菌が先に動いてしまい、長めの糖鎖を生成してしまったのだと思います(※もちろん摂取しても大丈夫なモノではあります)。

時間が解決してくれるまで置いておくつもりでしたが、一部の酒屋さんから「味は良いから全然問題ないんじゃない?」とアドバイスをいただきました。そんなこともあり、楽しんでいただける方もいるかな?ということで現状のままリリースすることにしました。

味わいとしてはトロリとした食感(?)もありで独特の飲み口とともにそれに閉じ込められた泡がプチプチとあります。赤いキャンベル感は少なく、醸しナイアガラ感が強め。口当たりと相まってネクターや南国フルーツのような印象とナイアガラの華やかさが同居する不思議な感じです。

以下お手数ですが,,, 吹きこぼれやすいですので、

  • 必ずよく冷やしてから+静置してからゆっくり抜栓して下さい。
  • シンクもしくはボウルの中での抜栓を推奨。
  • 五分五分くらいで吹く感じです。
  • とろみがあって泡の上がりがゆっくりのため、開けてしまってすぐに一杯目を注いでしまう、というのも良いかもしれません。

また、液体に粘性があるため、オリがかたまり状態で浮いてくることがあります。飲んでも問題ありませんが、気になる方は除いてお召し上がり下さい。

正直なところ醸造の失敗な部分はありますが、逆に言うと造ろうと思って造れるワインではありませんし、面白ワインとしてでも、独特な感じを楽しんでいただけたら幸いです。

2023 早花咲月ロゼ(2023年12月リリース)

お気軽お手軽なロゼスパークリング。新酒造りということもあり、例年の3月リリース版よりも泡は弱めになっています。

ブドウ栽培: 余市町3箇所より
ブドウ品種: ナイアガラ+キャンベル・アーリーが10%ほど+ピノ・ノワールとポートランドがほんの少し
アルコール: 8.0%/微発泡性
醸造本数: 約2,600本
リリース: 2023年12月
お取扱い上の注意: よく冷やしてから抜栓してください。

例年は3月にまとまった量でリリースしている早花咲月ですが、2023年はナイアガラの量が多かったということもあり、一部を12月にリリースしました。

ブドウは余市町の3箇所の農家さんより。猛暑の影響などもあり、ナイアガラは熟しがなかなか進まず、キャンベルは病気が広まってしまったためかなり収穫がはやくなりました。全体的にもう少し充実感が欲しかったかなという印象。そういったこともあり、ランセッカ自園のピノ・ノワール(のハードプレスラン)を加えています。

数日のスキンコンタクトを経て水平機械式でプレス。数回の澱引、ブレンドの後に補糖・瓶詰めして瓶内二次発酵で泡を付けました。亜硫酸は無添加。

黒ブドウの比率が少なめということもあり色は前年のヴィンテージよりも透明感のある赤。アセロラやスイカといったみずみずしさのある果実感が感じられます。口中では赤っぽい風味とともに少しの苦味が後半を締めくくります。

リリース時点では少し甘さが残っていてる場合もございますが、クリスマスや年末年始といった場でゆるやかに楽しんでいただけたら幸いです。

2023 Cam blanc

赤ブドウのキャンベル・アーリーから作った爽やかな酸の白仕込みスパークリングワイン。

ブドウ栽培: Sunny Side Farm(余市町登町小登地区)
ブドウ品種: キャンベル・アーリー
アルコール: 8.5%/発泡性
醸造本数: 約220本
リリース: 近隣飲食店、自社でのイベント販売
お取扱い上の注意: オリを静置し、よく冷やしてから抜栓してください。

病気には比較的強いと言われるラブルスカですが、さすがの夏の蒸し暑さに負けて晩腐病が多発しました。選果しながらの収穫は時間と手間のかかる作業となりました。

9月下旬に収穫したブドウをできるだけ潰さずに1週間ほどタンクで醸し、バスケットプレスでじっくりゆっくり搾汁しました。発酵は樹脂タンクにて行いました。
発酵が落ち着いたら、11月中旬に砂糖を加えて瓶詰めし、瓶内二次発酵を行っています。
翌年2月下旬、デゴルジュマン(オリ抜き)を行いました。

醸し期間を経たため、山吹色に近い色合いです。
レッドカーランツ、アセロラ、ラズベリーの香り、しっかりめの酸があります。
口に含むと酢酸エチルも若干感じられます。
少し暑くなってからの食前酒、風呂上がりの一杯、オイル系のパスタと一緒にどうぞ。

(りゅうこはる記)

なごりの(2024.3月瓶詰め)

2022のオリ上と2023のハードプレスを集めて瓶詰めした残りモノワイン。

ブドウ栽培: 余市町
ブドウ品種: ランセッカで23,24に仕込んだヴィニフェラ種ほぼ全部
アルコール: 13.5%
醸造本数: 約130本
備考: 飲食店への販売、イベントでの販売など

前年は蛙鳴千草Nagorinoとしていたワインを新しいラベルにて独立させました。

作り方は変わらず、オリ上、ハードプレスを集め、上澄みだけを瓶詰めしたワイン。もったいないですからね。品種はピノ・ノワールからケルナー、セミヨンまで、どれが多いというわけではなく、どれも数%ずつ。

黒ブドウの色づきが浅かったこともあり、色合いは少し暗めのロゼになっています。味わいとしてはメルローの紅さとケルナーのアロマ、ソービニョンブランの青さなどが感じられます。アルコールは高めの13.5%で、口当りもボリューム感がしっかりしています。酸もしっかりあり、全体的に立体感があります。

トマト系パスタやニョッキなど炭水化物系にもよさそうです。ストライクゾーンは広めかなと思いますのでぜひ気軽なランチなどにどうぞ。

主に飲食店に出していますので、お見かけの際にはぜひ。イベントでの販売もするかも?